この間、思い起こすように書き溜めたMOMAでの出来事が誤って消えてしまって、すっかり書く気を落としてしまった。しかし書いていたときに気づいたのは、今でも「夢」に出会うまでの自分の胸の高鳴りや目にしたときの抑えきれない感動は、覚えているということ。その時に出た涙のように目頭がじんわり熱くなり、絵の中に入り込んでいたときの感覚がちゃんと体に記憶されていると実感できる。ニューヨークがとても楽しかったという感想より、MOMAに行けたこと、ルソーの「夢」をみて心がとても揺さぶられたこと、モダンアートの面白さを実感できたことで十分だった。
小さな頃から母親に連れられて美術・芸術にふれる機会がたくさんあった。美術館に行くのも、いろいろな作品を見るのも好きだったけれど、アートの見方がわからないと思っていた。感覚的に好みかそうでないかや、すごいなぁ、不思議だなぁ、という単純な感想だけだった。でもだんだんと画家にどんな背景があって、どんな時代を生きて、どんな思いだったか想像したり、自分をどこか重ね合わせてみたりすると面白くなってきた。楽しみ方は自分の中にあるのだと知った。
印刷や画面でみるのと、本物は全く違う。自分の目で確かめたい。