2019/03/02

物語が失われたあとに

いつも物語が届く。誰にどんなシーンでお花を贈るのか、相手の好みや人柄について。自宅用ならインテリアのテイストや飾りたい場所の写真も一緒に。先日はお子さんが病気がちで、それに伴い引っ越しをする方から新居に飾る唐辛子のスワッグを頼みたいとご連絡をいただいた。「新しい暮らしが健やかで笑顔溢れるものであるように」と頼んでくれた方の真っ直ぐな願いが伝わってきた。
飾られたリースやスワッグはだんだんと色褪せて、きっと物語性や臨場感も少しずつ失われてその空間に馴染んでいく。その場にあるのが気にもとめないほど自然なかたまりのように。ただの作品から、ただのものになって、その時初めてそのもの自身の力を見るような気がする。ただ、ありのままの存在と、本当の想いだけが残っているような。それが本来のリースの姿であり、自分が作り続けていることに対しての一つの光を見つけたような気持ちになっていた。
インスタグラムにリースを1つポストした。友人がわたしの作ったばかりのリースをみて「願いが叶いそうな気がする」とつぶやいた。もしかしたら、物語性と臨場感の鮮度に左右されずにそのものの力は既に存在しているのかもしれない、と思った。